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なぜ人は動かないのか?

人が行動しない理由は、大きく分けると3つ。

  1. やるべきことが分からない
  2. やり方が分からない
  3. やる意思がない
因みに、行動しないというのは、やるべきことをやるべきタイミングでやるべきやり方でやらない、という意味で、無動であるという意味ではない。

やるべきことが分からない
やるべきことが分からない人はやるべきことができない。これは当たり前。
本人はやるべきことが分かっているつもりでも、周りの人からは「動かない」と思われることもある。
それは、やるべきと思っていることが周りの人とその人とで異なっている場合。

すこし難しく言うと、どのような条件が満たされたらどのような行動を開始・停止すべきかの判断基準が チーム内で共有できていないとき、動かない人が生まれる。
やるべきことが分からないために行動できない人がいるという問題は、突き詰めれば情報共有の問題である。
共有すべき情報は、開始・停止条件と、その行動の内容。

さらに、開始・停止条件が共有されていないという状態には、判断に必要な情報がないパターンと判断の方法が 明確でないパターンの二つがある。
必要な情報がないパターンは、たとえば「9時に開始と言われたけれども、そもそも時間が分からない」という状況だ。 時計が間違っているのも同じ。
判断の方法が明確でないパターンは、「汚くなったら掃除」と言われた場合。
どのぐらい汚くなったら掃除すれば良いかが不明確なので人によってばらつきが出る。
人によってばらつきが出るということは、「汚い」の閾値が低い人ばかりが掃除する羽目になり、 「汚い」の閾値が高い人は動かない人になる。

アリは閾値のバラつきによって、巣を守っているらしい。
働きアリには、巣の掃除、エサを探してくる、子どもの世話などの仕事がある。
もし、「汚くなったら掃除開始」閾値がみんな同じだったら、いっせいに掃除を始めて、エサを探す蟻も、 子どもの世話をする蟻もいなくなってしまう。
そのため、働きアリはそれぞれの仕事閾値にバラつきがあり、一部のアリだけが仕事をするようになっている。
汚れが激しくなったり、エサが足りなくなってくると、汚れや空腹レベルが上昇し、 それまでぼーっとしていたアリたちの閾値を超え、働き始める。
だから、アリの巣では通常は3割程度のアリしか働いていないらしい。

わたしたちの何かを感じるレベルが人によって違うことも、人類の生存の役に立っているのだ(たぶん)。 「こんなに汚れてるのに何とも思わないの?」なんて怒ってはいけない。
話が逸れた。

いずれにしても、やるべきことが分かっていない人がチームにると思うなら、 あなたのチームは情報共有に問題がある可能性が高い。

対処方法は簡単で、やるべきことと条件を教えてあげて、必要な情報を知るための環境を整えれば良い。
条件と行動の組み合わせが多い場合は、その仕事ができるようになるにはスキルが必要だ。 スキルを身につけるには訓練が必要になる。
行動開始の判断基準が客観的に示せない場合も同様に訓練が必要だ。

スキルとは、身につける方法が明らかになっている技術のことだ。
身につける方法が分からない場合は、その技術は個人の資産であってチームのものではない。
チームのために使えるのはラッキーだと思おう。

やり方が分からない
人はイメージできることしか行動できない、とは誰が言ったか知らないが、これは真実だ。
行動をイメージできなければ人は行動できない。

したがって、やり方が分からないには、二種類ある。
それは、本当にやり方が分からない場合と、やり方は分かるけれどもできないと信じている (できないイメージを持っている)場合だ。

本当にやり方が分からない人は、できるようにしてあげれば良い。
知識が足りないなら知識を頭に叩き込み、スキルが必要なら訓練する。 人によって向き不向き、得意不得意はあるだろうが、比較的簡単だ。
上にも書いたが、身につける方法が分からない技術はチームのものではないので、 身につけることを求めてはいけない。

対処が難しいのは、「できないと信じている」場合だ。
人はできないと信じていることは行動に移さない。たぶん、生き物全般に共通する性質だと思う。
おそらく、できる(やっても死なない)こととできない(やったら死ぬ)ことを区別できない生き物は すでに死に絶えている。

心の問題なので、通常、第三者がどうこうできることではない。 簡単に変わる可能性があるとしたら洗脳か催眠術ぐらいだろう。が、倫理的に問題があるのでやってはいけない。
本人にもどうしようもないから、「君ならできる、信じろ」といくら言ってみても無駄だ。
むしろ、「失敗しても良い」と語りかけつつ、「わたしはできる」と信じることができるまで、 少しずつ、根気強く、手取り足取りやらせるほかないと思われる。
初めのうちは強いストレスになるはずなので、無理強いは禁物だ。

やる意思がない
「やりたくありません」とはっきり言う人はあまりいないが、もしそんな人がいたら、 その人は本当にやりたくないのではなく、やらない方が良いと戦略的に判断している人だ。
条件次第でやるだろう。

むしろ、「やります」と言いながらやらない人の方がやっかいだ。
彼らは、生き物として優先すべきことが他にあり、しかも本人はそれに気づいていない。 もし気づいていたら、「こちらを先に終わらせてからやります」と言うはずだ。

強いストレスを感じていて、身を守ることにすべてのエネルギーを注ぎ込んでいる人は 「やりたくない」とは言わないが、決して「やるべきこと」はやらない。
どうすれば上司に怒られずに過ごせるだろうか、と日々怯えている人は、問題があっても報告しない。 上司から電話が来ても出られない。
恐いんだから仕方がない。
恐怖反応には、すくみ、逃走、防衛的攻撃、交渉(ゴマをすったり)の四種類がある。 哺乳動物全般に共通らしい。
あなたの周りにそんな反応をする人がいたなら要注意。彼らは身を守ることが最優先になっている。

ストレスは、弱い立場の人だけが感じるわけではない。
だれかれ構わずマウントをとろうとするような人がいるが、彼らも決して「やるべきこと」はやらない (やらなくて良いことばかりやる)。
他人よりも強い立場を手に入れなければ不安で仕方がないため、周りの人を見下し、粗探しをし、 チームの足を引っ張る。
が、そのことに自分は気づかず、つねに周りに足を引っ張られていると感じている。
本人以外全員がその人の害悪には気づいているが、対処はそう簡単ではない。

知識やスキルの問題はその気になれば解決できる。さっそくやろう。
人の行動には必ず目的がある、と言ったのは心理学者のアルフレッド・アドラーさんだ。
原因ではなく目的に注目することで、行動しない人を行動する人に変えられるかもしれない。